東南アジアの中でも人気の移住・転職先であるタイ。気候や物価、食べ物だけでなく、「人の優しさ」に魅かれて移住を決めたという日本人も少なくありません。
ただ、価値観や常識の違いから、最初は戸惑いや誤解が生まれることも。
この記事では、生活面にフォーカスして、タイという国を理解するために知っておきたい「国民性・宗教・文化的背景・タブー」などを、7つの「心得」としてご紹介します。
心得①:「マイペンライ」と上手く付き合う
タイに来てまず覚えるタイ語のひとつ、「マイペンライ(ไม่เป็นไร)」は、タイ人の国民性を象徴する言葉です。とても便利な言葉ですが、慣れないうちは「それで済ませるの?」と戸惑うことも。意味と背景をしっかり理解しておくと戸惑いが軽減されます。
マイペンライの意味
「マイペンライ(ไม่เป็นไร)」の言葉の意味とは:
「大丈夫・気にしないで・なんとかなるよ・どういたしまして・全然!」に相当します。
どんな時に使うの?
タイではあらゆるところで使われること魔法の言葉。覚えておくととても役に立ちます。
例えば:
何かを断る時:
何かを勧められた時など、「要りません、結構です」とはっきり断るより、「マイペンライ」と言うことで、角が立たないように断ることができます。
気にしない精神はタイ人の美徳
多少のミスや遅れには目くじらを立てない、おおらかで寛容なマインドがタイ人の国民性です。物事が予定通りに進まなくても「まぁいいか」と笑って済ませるのがタイ流。
このマインドは外国人として生活する上で、衝突やストレスを避けて生活していく上でもとても助けになります。
日本人がマイペンライ精神と付き合うには
日本では「問題点を指摘して改善する」ことが良しとされますが、タイでそれをそのまま持ち込むと、「細かすぎ」「感じが悪い」と受け止められることもあります。
タイでは白黒させるよりも、衝突を避けることや空気を読むことの方が重要。お互いに「マイペンライ」と受け流し合える関係が築けると、ストレスなく快適に暮らせます。
心得②:生活に根付く仏教文化をリスペクトする
国民の約9割が仏教徒のタイ。日常生活に仏教が深く根付いています。お坊さんの朝の托鉢、街中の仏像や祠、びっくりするようなご高齢の僧侶の写真をネックレスに入れている若い方なども見かけ、日本人の想像を超えるレベルで宗教が人々の心に息づいています。
映えは後回し!寺院参拝時のマナーは厳格に
タイでは寺院や儀式に対する侮辱行為や、妨害行為は厳しく罰せられます。さらに仏像はたとえ倒壊したものであっても神聖なものとされており、タイ国外への持出しも禁止事項です。さらに寺院へ入る際は肌の露出の少ない服装、そして靴も脱いで素足で入らなければいけません。
写真を撮る際も、寺院の中でふざけたポーズを撮って撮影すると侮辱罪に当たることもあります。
また大きな声を出したり、笑ったりは控え、祈りを捧げている人の妨げにならないように配慮することも必要です。
僧侶への敬意は必須
タイでは僧侶の社会的地位が高く、国民から敬意を払われています。そのため公共交通機関では、妊婦・高齢者・身体障がい者と並んで僧侶にも優先席が用意されています。
特に女性は僧侶に触れてはいけないとされているため、隣席の人が僧侶に席を譲った際などにも注意が必要です。
仏教行事は人生の節目に関係
その他いろんなところに仏教が根付いています。
例えば:
短期出家
しばらく休んでいた同僚が、久しぶりに会社に来たと思ったら「眉毛なし・坊主頭」で出社してくる、なんてことがタイではよくあります。そう、彼らは「短期出家」に出ていたのです。タイの男性は人生に一度仏門に入る、という習慣があり、親・兄弟は喜んで送り出します。
企業の福利厚生にも、「出家休暇」が存在し、働いていても、結婚前のタイミングや親孝行のために出家する男性が多いのです。
イベントに僧侶登場
結婚式や新築祝い、新オフィスの開所式などに僧侶が招かれ、読経や祝福の儀式を行います。
街角に祠
街角のいたところに祠があり、朝お祈りを捧げる人をよく見かけますし、古い木には精霊が宿るとされており、大きな木に3色の布が巻かれていたりします。
え!と思うような習慣も多いですが、若い人でも信仰深い人が多いため、仏教関連へ敬意を示すことは、タイで生活する上で欠かせないポイントです。
心得③:王室への敬意
タイでは人気の俳優やモデルよりも、王様・王妃様の肖像画や写真をよく見かけます。王室批判は法律で厳しく禁止されており、軽い気持ちでの発言も罰せられる可能性があるので特に気をつけましょう。
お札も取り扱いは慎重に
タイでは紙幣や硬貨にも王様の肖像が印刷してあるため、踏んだり汚したりする行為は重大な侮辱になります。
映画館や劇場での国王讃歌(上映前)
上映前やステージ前にも国王讃歌が流れ、起立が求められます。
敬意を超えた信仰心
王室に対する感情は、敬意を超えて“信仰”に近いものがあると理解しておくことが大切です。SNSや日本語での会話でも王室に対する発言には細心の注意を。
心得④:上下関係よりも年上を敬う
タイではもちろん上司に敬意を払う文化はありますが、「上座下座」などのルールがある日本ほど形式張っていません。それよりもタイで重視されるのが「年齢」です。年上は敬うべき存在。これは公共の場でも会社の中でも変わりません。
例えば、自分の方が役職が高くても、年齢が上の同僚に対しては、敬意を持って接したり、仕事を頼む時も「お願い」した方が色々とスムーズです。
さらに高齢者はものすごく丁重に扱われます。公共の乗り物を使って移動するおじいさんおばあさんは少ないですが、見かけた場合、みんな真っ先に席を譲っています。
公共の場でも、年齢が上になる方が生活が楽に、、、。筆者も20代の頃より、アラフォーになった今の方が、社会で丁重に扱われるようになったと実感しています。
心得⑤:「家族・親族」優先の価値観
タイでは、家族を最優先する価値観が深く根付いています。たとえば「お母さんを病院に連れて行く」や「親戚の結婚式がある」といった理由で、急な欠勤や早退が発生することもしばしばあります。中華系タイ人の家庭では、旧正月前の準備のために数日間休むというのも一般的です。
また、親戚の子どもを育てている独身者がいたり、家族ぐるみで生活費や子育てを分担していたりと、広い意味での“家族”で支え合う文化も見られます。学校が休みになると、「どこの子?」という子どもがオフィスに現れることもあるなど、日本の常識ではちょっと考えにくい光景に出くわすこともあります。
日本的なビジネス感覚と異なる部分も、文化の違いとして理解し、柔軟に受け止める姿勢が大切です。
心得⑥:女性が活躍!管理職も多い
タイでは女性の就労率が高く、特にサービス業・販売業・官公庁、企業の経営者や管理職として活躍する女性も非常にたくさんいます。
日本では、管理職に占める女性の割合は14.6%ですが、タイでは38.2%と高い水準にあります。「女性だから」という理由で昇進できないということはほぼゼロに近いです。
「男性が外で働き女性が家を守る」という価値観も薄く、子供は両親、または子守りに預ける、掃除はお手伝いさん、食事は外食、と外注することに抵抗を感じないことも理由にあげられます。
心得⑦:LGBTQ+に寛容な社会
タイはアジアでもっともLGBTQ+に寛容な国のひとつ。
オカマショー、ゲイバーなどの文化が広く浸透しており、公共機関や企業にも性的マイノリティーが多数在籍。さらに同性婚に関する法整備も進んでおり、結婚も可能になりました。
多様性が日常に溶け込んでおり、LGBTQ+の友人や同僚と自然に接することができます。
🚫 タイで避けたい仕草・NG行動
以上7つの心得のほかに、タイで避けたい行動を以下にまとめます。
いかにタイ人がおおらかな性格であっても、なんでも「マイペンライ」で済まされるわけではありません。無意識のうちに相手を不快にさせてしまうこともあります。
タイでの生活を気持ちよく送るためにも、現地の文化や価値観に配慮した行動を心がけましょう。
・人の頭を触る(子供でもNG)
・王室関連の話題を軽く扱うこと(敬意が非常に重んじられる)
・公共の場で大声で怒る・文句を言う(感情の爆発は好まれません)
・恋人同士の過剰なスキンシップ(公共の場では控えめに)
まとめ:違いを知れば、もっとタイが好きになる
タイでの生活でも、「郷に入っては郷に従え」の姿勢がとても大切です。ただし、タイ人は基本的に優しく寛容な国民性を持っており、敬意と笑顔とマイペンライを忘れなければ、たとえ失敗しても許されることがほとんどです。
違いを楽しむ心の余裕を持って向き合えば、タイ人との関係もきっと円滑になります。