タイで働くためのビザー現地採用歴15年が語るリアルと対策

「タイで働きたい!」そう思って求人を探し、内定をもらった後に、多くの人がぶつかる最初の壁。それがビザ取得です。観光ならノービザで簡単に渡航できるタイ。でも、“働くため”のビザと許可証がなければ、現地で仕事を始めることはできません

この記事では、タイで働くうえで知っておくべきビザと労働許可証の基礎知識から、実際にありがちな落とし穴まで、リアルな視点で解説していきます。

働くためにビザと許可証がセットで必要?!

現在日本パスポートはタイに観光で入国する際にはビザ(査証)は必要ありません。ビザなし(ノービザ)でも60日間滞在することができます。

ただし働くためには、以下の2つがセットで必要です。

日本語 英語 通称
1.ノンイミグラント・ビジネス・ビザ Non-Immigrant B (Business) Visa B-ビザ
2.労働許可証 Work Permit ワーパミ

ノンイミグラント・ビジネス・ビザ(Bビザ)とは

「Non-Immigrant B(Business)ビザ」とは、就労目的でタイに滞在する人向けの滞在ビザ。就職先が発行するサポート書類をもとに、タイ大使館(日本または第三国)で申請する、就労許可証とセットで運用される前提のビザです。

労働許可証(ワーパミ)とは

労働許可証とは、タイで労働をすることを合法的に許可する文書で、雇用先と職種が明記されています。就職先が労働局に申請し、発行されるパスポートサイズの冊子のことです。

Bビザを取得しただけではタイで仕事はできません。必ず労働許可証(ワーパミ)が必要です。

Bビザ申請方法と場所

基本的に申請者が用意できるものと雇用主に用意してもらう書類が異なります。用意するのに時間がかかる書類もありますので注意が必要です。

Bビザ必要書類ー申請者

・申請書
・パスポート原本(有効期限6ヶ月以上、余白ページ2ページ以上)
・パスポート顔写真ページコピー
・英文経歴書
・証明写真1枚
・航空券

Bビザ必要書類ー雇用主

・英文招聘状
・会社登記簿謄本のコピー

在京大使館ウェブサイト
申請をする国、大使館、企業によっても必要書類が異なりますので必ず確認してから申請してください。

どこで申請するの?(タイ国内・国外)

初回のBビザはタイ国外のタイ大使館・領事館での申請が基本です。

日本人は日本(東京・大阪)で取るのが一般的ですが、タイ国内で転職を決めた人は
ラオス、マレーシアやシンガポールのタイ大使館で取得するケースも。
特にラオスが旅費も安上がりのため、小旅行を兼ねてビザ申請に行かれる方の声をよく聞きます。

一部の大使館では事前予約が必須で、申請受付は午前中のみのこともあります。事前に確認し、余裕を持った渡航計画を立てましょう。

ビザ取得のよくあるトラブルと注意点

最近よくあるのが、就職が決まったのに会社がBビザやワークパーミットの手続きを一向に進めてくれない、ビザ取得のための旅費が全額自己負担だった、といったトラブル。

海外では「自分の身は自分で守る」が基本。事前に会社とビザ取得に関する取り決めをしっかり確認しておきましょう。

就職=ビザサポートありではない

「内定が出れば自動的にビザサポート付き」と思っていた方が、会社から「自分で取得して」と言われ、慌てるケースもあります。必ず就職の際には「ビザサポートありかどうか」事前に確認を。

特に会社側に用意してもらう書類が多いため、ビザ申請は自己完結が難しく、ビザサポートの有無は非常に重要なポイントです。

新卒者は要注意

タイでは、大学卒業+実務経験がBビザ取得の条件になっている場合が多く、新卒ではBビザ取得のハードルが高いこともありますので要注意です。

渡航費・ビザ取得費用は?

企業によっては取得にかかる費用や渡航費を負担してくれないケースも。求人時に「ビザサポートあり」と書いてあっても、具体的に「どこまで支援してくれるか」の事前確認は必須です

タイ国外のタイ大使館でしか申請ができないため、どこで内定が出たとしても、ビザを取得するための交通費(フライト代含む)、宿泊費、ビザ申請費が必要になる場合があります。

リアル体験談:ビザ取得のあれこれ

過去に4度ほどビザ申請を国外大使館で行ってきた筆者のリアルな声を共有いたします。

 初回ビザは90日しか出ない?

筆者が最初にBビザを取得したとき、パスポートのビザ判子ページに記載されたのは90日間のみ大使館でのBビザは90日しか出ず、その後タイ入国後に、ワークパーミットとセットで1年間の延長手続きが必要ということを知らなかったため、3ヶ月しか働けないのかとかなり焦って人事担当に国際電話しました。

「大丈夫大丈夫、90日後にタイ国内で延長するから」

その言葉に救われたのは言うまでもありません。

大企業は専属ビザサポートチーム任せでラクラク

大手外資系企業では、専属のビザサポートチームが全て代行してくれました。外国人が入れ替わり立ち替わり何十人も働いていたので、書類準備も更新時の整理券ゲットまでノンストレスで進められます。

小規模企業では自力申請

反対に小規模の企業では、一人でイミグレーションに行かされたり、労働局に行って手続きしたことも。タイ語でのやり取りも必要で、まさに“体当たり”。イミグレーションのスタッフはお世辞にも優しいとは言えない対応でびっくりもしましたが、自分で手続きの流れや必要書類を理解できたのは良い経験でした。

人事やエージェントを味方に

多くの駐在員や直属の上司は、実はビザのことに無関心・無知な場合も。人事や総務担当者としっかり関係を築くことが、ビザ取得のカギになります

特に現地採用で働く場合、ビザ担当者と良い関係を築いておくと今後の手続きや更新の際に詳しく教えてくれたり、予定に融通を効かせてくれるなんてこともありますのでおすすめです。

Bビザを持つとできること

Bビザとワーパミを取得すると、観光ビザとは違い、生活面でもメリットがあります。単に働くためのビザ、ではなくタイの社会の一員としての信用を得られるのがBビザです。

運転免許証の取得・切り替え

Bビザがあると、日本の免許証または国際免許証をタイの運転免許へ書き換えすることが可能です。

「国際免許証があるし、タイで運転するつもりはないから必要ない」、という方もいらっしゃるでしょう。

ですが、写真付きのIDがパスポートしかない日本国籍の私たちにとって、タイの運転免許証、写真付きIDに匹敵するカードを手に入れられると非常に便利です。

何かをレンタルする時や、オフィスビル、また友達のコンドミニアムを訪問する際など写真付きIDを求められることがあり、パスポートを預けるのには抵抗がある、、、という時にタイの運転免許証が役に立ちます。

銀行口座開設・クレジットカード申請

この2つもBビザがあれば申請することができます。

銀行口座は生活していくためには必須です。給与の振込先としても必要になります。

「クレジットカードは日本のものがあるから大丈夫」と思う方もいるかもしれませんが、タイ国内での信用履歴を作る意味でも、現地のカードを持っておくと便利です。

特にネットでの予約、プロモーションの適用など、タイ発行カード限定の特典も多くあります。

また、タイの銀行アプリやモバイル決済(True Moneyなど)と連携できるため、日常生活の利便性が格段に上がります。

長くタイで生活する予定がある方は、早い段階での口座・カード取得をおすすめします。

銀行モバイルアプリ利用

タイではキャッシュレス化が急速に進んでおり、銀行アプリなどのモバイル送金サービスが日常生活に欠かせない存在になっています。銀行口座やクレジットカードと連携して、QRコード決済や送金、公共料金の支払いなどがスマホひとつで完結できます。

これらのサービスを利用するには、基本的にタイの銀行口座が必要です。そして、その口座を開設するには、Bビザの提示が求められます。

ローカルの屋台や市場でも、支払い用のQRコードがさりげなく置かれており、アプリで簡単に送金できるのは衛生面でも安心感があります。1バーツから手数料無料で送れる手軽さも魅力。タイで暮らすなら、ぜひ活用したい便利ツールのひとつです。

ビザなしでは働けない

最近、SNSでは「フリーランスとしてタイで仕事してます!」という投稿を見かけますが、原則としてタイで報酬を得る活動にはBビザと労働許可証が必要です。

ですがその他の働ける可能性のあるビザもいくつか存在します。

その他働ける可能性のあるビザ

DTV(デスティネーション・タイランド・ビザ):

ノマドワーカーやリモートワーカー向け。オンラインで働くことは可能ですが、滞在期間やその他に制限があります。

タイ人配偶者ビザ(Non-Immigrant O – Thai Spouse):

タイ人の配偶者であれば、労働許可証を申請することができます。ただし、駐在員の帯同配偶者が持つOビザでは就労不可です。

まとめ ─ ビザを制する者がタイ就職を制す!

タイで働くためには、ビザと労働許可証の取得が最初の重要なステップです。「ビザって面倒くさそう」と思うかもしれませんが、ルールさえ知っておけば大丈夫。経験上、最初は大変!でもそこを乗り越えたら後は更新を繰り返すだけです。しっかり準備しておけば、その後の生活がぐっと楽になります。

タイでのキャリアをスムーズにスタートさせたいなら、まずは「ビザとワーパミの基礎を知ること」そして、自分の働き方や将来設計に合ったビザを選ぶことが、長く快適にタイで働くための第一歩です。

ビザ・労働許可証、外国人就業規制の詳細はこちらをご参照ください
JETRO日本貿易振興機構
現地在住ライター紹介
この記事を書いた人
カイシー

海外在20年以上、現在はバンコク拠点に生活。
幼少期より多国籍な環境で育ち、バンコクの日系・外資系の企業で勤務、国際結婚を経て海外での暮らしとキャリアを深めています。海外での就職や働き方、ローカルスタッフとの接し方など自身の経験をもとに発信中。

趣味はカフェホッピング、海外ドラマ鑑賞、気になることはすぐ飛びつくけど継続が苦手なINFJ。

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