「タイの現地大学のレベルって?」
「日本のような、偏差値ランキングはあるの?」
採用担当者の方や、これからタイで就職を考えている方にとって、タイの大学ランキングはとても気になるポイントだと思います。
実際のところ、タイでは特に新卒採用や大手企業・公的機関などの就職活動において、「出身大学」が人材の質や能力を判断する際の重要な指標のひとつとされています。
チュラロンコン大学、タマサート大学など、いわゆる「トップ大学」出身者は企業から高く評価される傾向があり、企業の求人票や採用条件に「特定の大学出身者歓迎」と記載されることも珍しくありません。
そのため、効果的な採用・就職活動を行うには、現地の大学のレベルや特色、学生の傾向などを理解しておくことが非常に重要です。
今回は、そんなタイの主な大学のレベルやランキングについて詳しくご紹介します。
最新!企業評価に基づくタイの大学ランキング
タイには約150の高等教育機関があります。
最新の2025年版QS世界大学ランキングでは、「雇用者満足度」という企業の採用担当者から見た評価に基づくタイの大学ランキングが発表されました。
【2025年度 最新版】雇用者満足度が高いタイの大学トップ10
- チュラロンコン大学 – 50.1点
- マヒドン大学 – 30.3点
- タマサート大学 – 26.4点
- カセサート大学 – 21.8点
- チェンマイ大学 – 19.3点
- コンケン大学 – 12.1点
- キングモンクット工科大学ラークラバン校 – 7.4点
- キングモンクット工科大学トンブリー校 – 7.2点
- プリンスオブソンクラー大学 – 7.1点
- シラパコーン大学 – 6.7点
参考URL: QS世界大学「雇用者満足度ランキング(タイ)」(英語)」
このランキングは2024年6月に発表された最新情報で、QSが世界105カ国の1500以上の大学を対象に評価した結果です。
特に「雇用者満足度」は企業が実際に採用した卒業生の質を評価した指標であり、採用担当者にとって非常に参考になるデータです。
タイの主要大学の特徴と学生の傾向
タイの主要大学には、それぞれ特色があり、卒業生の傾向も異なります。
つづいて各大学の特徴を解説していきたいと思います。
チュラロンコン大学(Chulalongkorn University)

引用:公式HPより
チュラロンコン大学は、「タイのハーバード」とも呼ばれる最難関大学。
1917年にラーマ6世(ワチラーウット王)により、父親であるラーマ5世(チュラーロンコーン大王)の名を冠して設立されたタイ最古の総合大学です。
「知識と道徳によって国家を築く」を理念に掲げ、タイのトップ大学として国際的にも高い評価を受けています。
バンコク中心部のパトゥムワン地区に広大なメインキャンパスを持ち、現在では20以上の学部と多数の大学院プログラムを提供。
研究、教育、社会貢献のすべてにおいて卓越性を追求し、タイの高等教育をリードし続けており、多くの首相や閣僚、著名人を輩出しています。
卒業生の給与期待値も高く、トップ企業志向が強いのが特徴です。
設立:1917年3月26日
在籍者数:38,053人 (2023年時点)
公式ホームページ:https://www.chula.ac.th/en/
マヒドン大学(Mahidol University)

引用:公式HPより
マヒドン大学は、1888年のシリラート病院設立に起源を持つタイ最古の医学教育機関です。
1943年に医科学大学となり、1969年に「タイの近代医学と公衆衛生の父」マヒドン親王にちなんで現在の名称となりました。
「世界クラスの大学」をビジョンに掲げ、研究、教育、医療サービスの卓越性と国際化を戦略目標としています。
医学・健康科学分野で最高峰の大学であり、研究志向が強く、国際的な評価も高いです。
創立:1888年
在籍者数:約29,640人 (2023年時点)
公式ホームページ:https://mahidol.ac.th/
タマサート大学(Thammasat University)

引用:公式HPより
タマサート大学は、1934年にプリディー・パノムヨン博士により「道徳政治科学大学」として設立された法律・政治・経済分野で高い評価を受ける大学です。当初は入学試験なしの開かれた大学でした。
1947年のクーデター後に現在の名称に変更され、制度も改革。
1970年代には民主化運動の中心となり、1975年からは科学技術分野も強化してランシット、パタヤ、ランパーンとキャンパスを拡大しました。
単なる就職準備ではなく社会的責任感を持つ「次世代リーダー」育成に注力し、首相をはじめとする、数多くの政治家を輩出しています。
日本語学科も充実しており、日系企業との親和性が高いのが特徴です。
設立:1934年6月27日
在籍者数:40,144人 (2023年時点)
公式ホームページ:https://tu.ac.th/en
カセサート大学(Kasetsart University)

引用:公式Facebookより
カセサート大学の起源は、1904年の蚕糸学校設立に始まります。その後、1908年に農業省学校となり、1913年に公務員学校と合併しました。
1914-1923年に農業教員養成学校が設立され、1924-1942年には全国各地に拡大。
1935年に政策変更でメージョー校が農業カレッジに昇格し、1938年にバンコクのバンケンに移転しました。
農業分野から発展し、現在は総合大学として特に工学・ビジネス分野でも評価を得ています。
設立:1943年2月2日
在籍者数:69,171人 (2023年時点)
公式HP:https://www.ku.ac.th/en/community-home
キングモンクット工科大学(King Mongkut’s University of Technology)

トンブリー校 引用:公式HPより
タイには3つのキングモンクット工科大学があります。
理工系の分野ではトップと言われ、日本政府と技術協力協定を提携するなど、日本との縁が深い大学でもあります。多くの卒業生が日系の製造業や建設業で活躍しています。
各キャンパス別の特徴や、それぞれどんな強みがあるのか見ていきましょう。
トンブリー校(KMUTT)は1960年にたった21人のスタッフで始まり、当初はトンブリ工科大学(TTI)として教育省下で技術者育成を目的としていました。
1971年に他の2校と統合してキングモンクット工科大学(KMIT)の一キャンパスとなり、1986年に独立機関となりました。
タイの主要研究機関としての地位を確立し、産学連携や研究イノベーションに強みを持ち、工学・技術分野ではトップクラスです。
設立:1960年2月4日
公式ホームページ:https://www.kmutt.ac.th/en/
ラートクラバン校(KMITL)は、1960年8月24日に日本政府との技術協力協定に署名し、教育省の下でノンタブリ電気通信訓練センターとして設立されました。
エンジニアリングや電子工学に強く、特に電気工学分野の博士課程は国内で初めて開設されました。工学分野の大学として、質の高い教育と研究環境が整っています。
設立:1960年8月24日
公式ホームページ:https://www.kmitl.ac.th/
北バンコク校(KMUTNB)は、1959年にタイ政府とドイツの協力により設立されました。「北バンコク技術学校」として知られていましたが、一般的には「タイ・ドイツ技術学校」と呼ばれていました。
2007年に現在の名称となり、バンコク本校の他、プラチンブリ(1995年)とラヨーン(2010年)にキャンパスを展開し、工学・技術教育を中心に多様な学部を順次設立して発展してきました。
設立:1959年
公式ホームページ:https://www.kmutnb.ac.th/
日系企業向け:日本語に強いタイの大学リスト
タイで事業展開する日系企業にとって、日本語能力を持つタイ人材の確保は重要な課題です。
バンコク日本人商工会議所の調査によれば、タイに進出している日系企業の約70%が「日本語コミュニケーション能力」を重視しています。
チュラロンコン大学文学部日本語学科
最も歴史が長く教育レベルも高い日本語学科です。
卒業生の多くはN2〜N1レベルの日本語能力を持ち、通訳・翻訳能力も高い傾向があります。
大手企業への就職希望者が多く、給与期待値も高めです。
公式ホームページ:https://www.chula.ac.th/
タマサート大学教養学部日本語学科
実践的な日本語運用能力に定評があり、チュラロンコン大学と同じく、卒業生の多くはN2〜N1レベルの日本語能力を持っています。
特に通訳・翻訳技術に強みを持つ卒業生が多いです。
日本への交換留学プログラムも充実しており、日本文化への理解が深いのが特徴です。

関西方面の大学へ留学する学生も多いようで、標準語に加えて関西弁も理解できる学生が多かったのが印象的でした。
筆者が通っていた大学にも、多くの留学生が在籍していましたが、
タマサート大学の日本語学科出身の留学生たちの日本語能力が特に堪能だったことが今でも強く記憶に残っており、筆者にとって思い入れのある大学のひとつです。
公式ホームページ:https://tu.ac.th/en
カセサート大学人文学部日本語学科
日系企業とのインターンシップ・プログラムが充実しており、ビジネス日本語に強い卒業生が多いです。
公式ホームページ:https://www.ku.ac.th/th
シーナカリンウィロート大学人文学部日本語学科
教育分野に強みを持ち、日本語教師を多く輩出しています。日本文化への理解が深い卒業生が多いです。
公式ホームページ:https://www.swu.ac.th/
アサンプション大学日本語ビジネスコミュニケーション学科
英語と日本語のバイリンガル教育を行っており、国際的な環境での業務に適した人材を輩出しています。
公式ホームページ:https://www.au.edu/
分野別に強いタイの大学リスト
タイでは業界によって評価される大学が異なります。次に、業界別に強みを持つ大学を紹介します。
製造業・エンジニアリング分野
キングモンクット工科大学
タイの理工系トップ校で、日本との技術協力や高専システム導入など日本との関係が深い大学です。
公式ホームページ:https://www.kmutt.ac.th/
カセサート大学工学部
もともと農業大学として設立されましたが、工学・理系分野の教育・研究レベルが高い大学です。
企業との連携やインターンシップが活発であることから、カセサート大学出身者は即戦力になるエンジニアとして企業から高く評価されています。
その他、東部経済回廊(EEC)地域に工場を有する企業では、ブラパー大学やラジャマンガラ工科大学など地元大学との連携を深めることで、人材の確保に努めているケースが見受けられます。
公式ホームページ:https://www.ku.ac.th/th
ビジネス・経営分野
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- チュラロンコン大学サシン経営大学院
- タマサート大学商学部・経済学部
- マヒドン大学国際カレッジ(MUIC)ビジネス学部
- アサンプション大学(ABAC)ビジネス学部
- カセサート大学経営学部
いずれもタイのビジネス界で高い評価を受けている名門校です。
例えば、CPグループ(Charoen Pokphand Group)名誉会長のタニン・チャラワノン氏は、タイ最大の財閥グループを率いた実業家ですが、サシン経営大学院で学んだ経験があります。
英語教育に強い
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- アサンプション大学(ABAC)
- マヒドン大学国際カレッジ(MUIC)
- チュラロンコン大学サシン経営大学院
- タマサート大学国際プログラム(TUIP)
特に、アサンプション大学(ABAC)は、1990年代からほぼすべて英語による授業が実施されている大学です。
「アサンプション大学出身といえば英語力」と言われるほど、その語学力の高さには定評があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、タイでの人材採用や就職活動の「入口」となる大学ランキングや、現地大学の特徴についてご紹介しました。
採用担当者の方や、これからタイでの就職を目指す方にとって、本記事が少しでも参考になれば幸いです。