「タイ語を勉強したいけれど、どこから始めればいいのか分からない。」
そんな悩みを持つ方は多いのではないでしょうか。
筆者は、タイのチュラロンコン大学が外国人向けに開講している「インテンシブ タイ」という名門コースを修了した経験があります。
知識ゼロからスタートし、会話・読み書き・王室言葉まで幅広く学ぶ中で、タイ語学習の重要なポイントを理解することができました。
この記事では、コースで学んだ知見と自身の経験を組み合わせた、誰でも実践できるタイ語学習の5つのステップをご紹介します。
これからタイ語を学ぼうとしている方の道しるべになれば幸いです。
タイ語の概要

お寺の壁画 (筆者撮影)
タイ語は一見難しそうに見えますが、文法は意外とシンプルです。
時制変化や複雑な活用がなく、「主語+動詞+目的語」と英語に近い語順になっています。
声調言語であることが最大の特徴で、同じ単語でも声の高低で意味が大きく変わります。
また、男女で使い分ける丁寧語があり、女性は「ค่ะ(カ)」、男性は「ครับ(クラップ)」を文末に付けて丁寧さを表します。
タイ語をマスターするためには、最初から完璧を目指すのではなく、段階的に上達していくことが大切です。
筆者おすすめ!タイ語学習の5ステップ
1. 簡単なフレーズを覚える
2. とにかく発音をマスターする【最重要】
3. 基本文法を覚える
4. あとはとにかく語彙力を増やしていくのみ!
5. タイ文字を覚える 【タイ文字は発展ステップ。興味が出てきたらぜひチャレンジを!】
ステップ1:簡単なフレーズを覚える

「サワッディーカー!」 (筆者撮影)
タイ語学習の第一歩は、日常でよく使うフレーズを覚えることです。文法や複雑なルールを気にせず、まずは以下のような基本フレーズを丸暗記しましょう。
よく使うフレーズ例
- こんにちは(女性):สวัสดีค่ะ(サワッディー カ)
- こんにちは(男性):สวัสดีครับ(サワッディー クラップ)
- 私は〇〇です:ผม/ฉัน ชื่อ …(ポム/チャン チュー …)
- これください:ขอ…หน่อย(コー…ノイ)
- いくらですか?:เท่าไหร่(タオライ)
- ありがとう(女性):ขอบคุณค่ะ(コープクン カー)
- ありがとう(男性):ขอบคุณครับ(コープクン クラップ)
これらのフレーズを実際の場面で使ってみることで、タイ語のリズムや雰囲気に慣れていきます。
また、タイ人は外国人がタイ語を話そうとする姿勢をとても喜んでくれるため、簡単なフレーズでも積極的に使うことで、コミュニケーションの糸口になります。
この段階では、発音が完璧でなくても気にせず、とにかくタイ語を話す楽しさを味わいましょう。
ただし、次のステップでは発音にしっかり取り組むことになります。
ステップ2:発音と声調をマスターする【最重要】
タイ語は発音が命です!
どんなに単語を知っていても、声調や発音が違えば通じません。筆者がチュラロンコン大学で学んだ際も、最初の数週間は発音と声調の練習に注力するというカリキュラムでした。
タイ語には5つの声調(平声、低声、下声、高声、上声)があり、これを正確に発音できるようになることが最初の関門です。
例えば「マイ」という音でも、声調によって全く異なる意味になります。
声調 | タイ文字 | 発音 | 意味 | 声の動き |
---|---|---|---|---|
平声 | ไม | mai | ーーー | |
低声 | ใหม่ | mài | 新しい | ーーー(低い) |
下声 | ไม่ | mâi | 否定(~ない) | \ (上から下に下がる) |
高声 | ไม้ | mái | 木 | ーーー(高い) |
上声 | ไหม | măi | ですか?(疑問) | / (下から上に上がる) |
声調をマスターするための効果的な方法は以下の通りです。
- 音声教材やYouTubeで声調の違いを聞き比べる
- 手の動きや大げさな発音で体に覚えさせる(例:上声なら手を上げながら発音する)
- 鏡を見ながら、スマホで録音して発音チェックする
また、タイ語には日本語にない子音もあります。
例えば「ng(ง)」の音は単語の最初にも来ることがあり、日本人には難しいポイントです。
こうした発音は、タイ語ネイティブの口の形をよく観察し、何度も練習することが大切です。
発音と声調は、タイ語学習の最初から最後まで常に意識し続けるべき最重要ポイントだと言えます。
ステップ3:シンプルな文法を理解する
タイ語の文法は比較的シンプルで、基本的には「主語+動詞+目的語」の順番です。
動詞の活用や、時制変化もほとんどありません。時制は補助語を使って表現します。
学習者には朗報ですね!
時制の例(「行く」を使って)
- 現在形:ฉัน ไป (チャン パイ) 私は行く
- 過去形:ฉัน ไปแล้ว (チャン パイ レーオ) 私は行った
- 未来形:ฉัน จะไป (チャン ジャ パイ) 私は行くつもりだ
- 進行形:ฉัน กำลังไป อยู่ (チャン ガムラン パイ ユー) 私は今行っているところだ
質問文・否定文の例
- Yes/No質問:คุณ ไป ไหม (クン パイ マイ) あなたは行きますか?
- 疑問詞質問:คุณ จะไป ที่ไหน (クン ジャ パイ ティーナイ) どこへ行きますか?
- 否定文:ฉัน ไม่ไป (チャン マイ パイ) 私は行きません
タイ語の文法は比較的シンプルなので、基本パターンを覚えて、語彙を増やしながら応用していくのが効果的です。
毎日少しずつ例文を作る練習をすると、自然と文法が身につきます。
ステップ4:語彙力を増やす効果的な方法
基本的な発音、文字、文法をマスターしたら、あとは語彙力を増やしていくだけです。
単語はカテゴリー別にまとめて覚えると実用的です。
覚え方には人それぞれ合った方法があると思いますが、筆者は主に「間隔反復学習法」を取り入れていました。
これは、覚えたいことを忘れかけた頃に繰り返し復習することで、記憶をより確かなものにしていく学習法です。
例えば、数分後、数時間後、1日後といったように、徐々に間隔をあけて何度も復習することで、知識がしっかりと定着していきます。
主語(代名詞)
- 私(男性):ผม(ポム)
- 私(女性):ฉัน(チャン)
- あなた:คุณ(クン)
- 彼/彼女:เขา(カオ)
動詞
- 行く:ไป(パイ)
- 来る:มา(マー)
- 食べる:กิน(ギン)
- 話す:พูด(プート)
- 買う:ซื้อ(スー)
形容詞
- 大きい:ใหญ่(ヤイ)
- 小さい:เล็ก(レック)
- 高い:สูง(スーン)
- 安い:ถูก(トゥーク)
- 高価な:แพง(ペーン)
- 美しい:สวย(スワイ)
疑問詞
- 何:อะไร(アライ)
- どこ:ที่ไหน(ティーナイ)
- いつ:เมื่อไหร่(ムアライ)
- なぜ:ทำไม(タンマイ)
- いくら:เท่าไหร่(タオライ)
日常生活・食べ物
- 家:บ้าน(バーン)
- レストラン:ร้านอาหาร(ラーン アハーン)
- 米/ご飯:ข้าว(カーオ)
- 水:น้ำ(ナーム)
- 鶏肉:ไก่(ガイ)
実際の場面で使うことを想定して単語を覚えると効果的です。
例えば、スーパーで買い物をしながら商品名をタイ語で確認したり、レストランでメニューをタイ語で注文したりすることで、実用的な語彙が身につきます。
また、タイのドラマや音楽を楽しみながら語彙を増やす方法もおすすめです。
Netflixには字幕付きのタイドラマや映画も多く、楽しみながら学習できます。
ステップ5:タイ文字に挑戦する【挑戦したい方向けのステップ】

タイ語のことわざ「過去は夢にすぎず、現在は幻のようで、未来はどうなるかわからない。」 (筆者撮影)
タイ文字は、タイ語をもっと深く理解したい方や、本格的に学びたい方におすすめの発展ステップです。
最初のうちは、ローマ字やカタカナ表記だけでも十分にタイ語を楽しむことができます。
旅行や日常会話レベルであれば、タイ文字を無理に覚える必要はありません。
ただし、タイ文字を学ぶことで、正しい発音や声調のルールがより分かりやすくなります。
例えば、同じ「mai」という音でも、タイ文字で書き分けることで意味や声調が変わるため、より正確に聞き取ったり話したりできるようになります。
タイ文字は44個の子音と32個の母音、声調記号の組み合わせから成り立っています。
英語のアルファベット(26文字)と比べると、はるかに多く、最初は難しく感じるかもしれません。
学習を進めて「もっと知りたい」「正確に発音したい」と思ったタイミングでチャレンジしてみるのがおすすめです。
タイ文字を覚えると、看板やメニュー、商品名などが読めるようになり、現地での生活がさらに便利で楽しくなります。
タイ語学習に役立つツール・方法
効率的にタイ語を学ぶために、以下のツールや方法を活用しましょう。
アプリ
Anki、Drops:単語帳として活用でき、効率的に語彙力アップ。間隔反復学習法で長期記憶として定着できます。

ニュースサイト
Bangkok Biz:タイ語・英語・中国語に切り替え可能です。タイ語の音声読み上げ機能付きで、ニュースを見ながらタイ語学習ができます。
https://www.bangkokbiznews.com/
SNS
Facebook、TikTok、Instagram:タイ人はSNSが大好き。タイ人の流行語やスラングが常にアップされており、日常表現をリアルタイムでキャッチすることができます。タイ人との交流にも最適です!
参考書
旅の指差し会話帳: 世界中の言語で出版されている大人気シリーズですが、タイ語を全く知らなかった時代に初めて筆者が購入した本です。タイ語の基本はもちろん、くすっと笑えるフレーズなども載っていて、この本で学んだフレーズは本当によく使っています。気軽に生きたタイ語を学べる本です。
語学教室
最後に、「独学が不安」「教室で学びたい」という方にお勧めの学校をご紹介します。
タイ国立チュラロンコン大学主催 「インテンシブ・タイ・プログラム(ITP)」
Nisa Thai Language School
多くのタイ語上級者はこの2校で学んでいる印象がありますので、おすすめします。
もちろん、その他の学校でも十分に上達できると思います!
タイ語検定試験の種類と特徴
タイ語の学習を進める中で、自分の実力を客観的に測るために検定試験を受けてみるのはいかがでしょうか。
タイ語検定は履歴書にも記載でき、就職・転職活動の強みにもなります!
ここでは、主要なタイ語検定試験を3つ紹介します。
実用タイ語検定
主催:日本タイ語検定協会
実施回数:年2回(春・秋)
試験内容:リーディング・リスニング・ライティング・スピーキング
レベル:5級(初心者)~1級(上級者)
特徴:日本国内で最も広く行われているタイ語検定。
試験会場:全国主要都市で実施。
公式サイト:http://www.thaigokentei.com/
Thai Competency Test(旧ポーホック)※申し込みや案内文は全てタイ語
主催:タイ教育省(Ministry of Education, Thailand)監修
実施回数:毎年1回
レベル:Level 1~6(6が最上級)
試験内容:リーディング・リスニング・ライティング・スピーキング
特徴:申し込みや案内文も全てタイ語なので、上級者向け
試験会場:主にタイ国内(バンコクなど)
公式サイト:https://bet-obec.thaijobjob.com/ (タイ語のみ)
チュラロンコン大学タイ語能力試験 (Thai Test for Non-Native)
主催:チュラロンコン大学シリントンタイ語研究所
実施回数:毎年1回
レベル:「優秀(Chula Distinguished)」「とても良い(Chula Superior)」「良い(Chula Advanced)」「中級(Chula Intermediate)」「初級(Chula Novice)」
試験内容:リーディング・リスニング・ライティング・スピーキング
特徴:タイ語を母語としない学習者向け
試験会場:チュラロンコン大学(タイ)、神田外語大学(日本)、雲南大学(中国)、高雄大学(台湾)
まとめ

筆者撮影
本記事では、タイ語を効果的に学ぶための方法を実体験を踏まえて、ご紹介しました。
まずは以下のポイントを意識しながら、毎日少しずつ学習を続けてみてください。
発音と声調をマスターする:タイ語学習の最重要ポイント
シンプルな文法を理解する:基本パターンを応用できるようになる
語彙力を増やす:実際の場面で使いながら単語を増やしていく
タイ文字を習得する:最難関ですが、乗り越えれば大きく上達します
タイ語学習は、最初の基礎さえ乗り越えれば、あとは実践と継続によって着実に力がついていきます。
完璧を求めすぎず、小さな進歩を楽しみながら、コツコツ続けていきましょう。
タイ語が話せるようになると、現地での生活や仕事がより充実し、タイの人々との交流も深まります。
自分に合った学習スタイルを見つけて、タイ語の世界を楽しく広げていきましょう!