タイ(バンコク)駐在という言葉に、どんなイメージを持ちますか?
南国での優雅な暮らし、安い物価、おいしい料理…
実際のタイ駐在生活には、華やかな面だけでなく、知っておくべき様々な側面があります。
タイ(バンコク)に4年以上住み、子育て中(娘5歳から現在9歳)の筆者が、実体験に基づいた情報を詳しくお伝えします。
駐在員の住環境 – コンドミニアムが主流
タイ駐在員の多くは、コンドミニアム(日本でいう分譲マンション)での生活を選びます。
バンコク市内の駐在員向け物件は、主にBTS(高架鉄道)やMRT(地下鉄)の駅周辺に集中しています。
駐在員に人気のエリアと家賃相場

筆者作成
駐在員に人気のエリアとしては、以下が挙げられます。
スクンビット地区:日本人駐在員が最も多く住むエリア。特にアソーク駅からトンロー駅周辺は日本食レストランやスーパーも充実。
サトーン・シーロム地区:大使館や外資系企業が集まる、バンコクを代表するビジネス街
家賃相場は立地と設備によって大きく異なりますが、一般的には次のようになっています。
2ベッドルーム(80㎡程度): 6万〜10万バーツ(約25.2万〜42万円)
駐在員向け住居の特徴
タイの駐在員向けコンドミニアムには、日本の物件にはない特徴があります。
・プール、フィットネスジム、サウナ、子供の遊び場などの共有施設が充実
・セキュリティが24時間常駐
・家具付き物件が多く、すぐに生活を始められる
・電気料金が日本より割高(電気は1ユニット約5バーツ=約21円)
「タイは物価が安い」というイメージがありますが、駐在員向け住居に関しては、近年の為替の影響もあり東京の家賃相場とさほど変わりません。
会社の住宅手当がどの程度あるかが、生活の質に大きく影響します。
タイの食生活 – 外食文化と日本食事情
タイは「食の王国」と呼ばれるほど、食文化が豊かな国です。駐在生活における食の選択肢は豊富で、予算に応じて様々な食事スタイルが選べます。
タイの外食文化
薄暗い早朝から道にはいろいろな屋台が出ており、タイ人は朝食や昼食を買って出勤しています。
タイでは自炊よりも外食が一般的です。その理由は次の通りです。
・屋台やフードコートが安価で美味しい(40〜100バーツ程度=約168〜420円)
・コンドミニアムのキッチンが小さく、調理スペースが限られている
・食材を買うより調理済み食品を買った方が安いことも多い
日本食へのアクセス

筆者にて撮影
バンコクの日本食事情は非常に充実しています。
・スクンビット地区を中心に600店舗以上の日本食レストランがある
・フジスーパー、ドンドン ドンキ、MaxValueなど日系スーパーで日本食材が手に入る
・冷凍食品や調味料など、ほとんどの日本食材が入手可能(ただし日本の2〜3倍の価格)
タイ料理が口に合わない方でも、バンコクでは世界各国の料理が楽しめるので、食の選択肢に困ることはありません。
自炊と食費の目安

筆者にて撮影
自炊派の方にとって、タイでの食材調達は以下のような選択肢があります。
・地元スーパー: Big C、Tescoなど(一般的な食材は日本より安い)
・高級スーパー: Gourmet Market、Villa Market、Topsなど(輸入食材も豊富)
・ローカル市場(最も安価): クロントイ市場、オートーコー市場、チャトゥチャック市場、プラカノン市場など
日本食中心の生活:3万〜5万バーツ(約12.6万〜21万円)
タイ(バンコク)の医療事情 – 駐在員の健康管理
タイ、特にバンコクの医療レベルは東南アジアでもトップクラスです。高品質な医療サービスを受けられる反面、費用面での注意点もあります。
駐在員向け医療機関

筆者にて撮影
バンコクには国際基準の医療を提供する私立病院が多数あります。
バムルンラード病院:日本語通訳常駐、日本人が最も多く住むエリアにあるので人気
サミティベート病院:日本語通訳常駐、日本人が最も多く住むエリアにあるので人気
バンコク病院:日本語通訳常駐、国際的な認証を受けた総合病院
これらの病院は、年中無休・24時間対応で、日本語通訳サービスがあり、日本人医師に医療相談も可能です。
総合病院は混雑しており時間がかかる場合もあるので、症状に応じて総合病院以外のクリニックの活用もおすすめします。
<スクンビットエリア>
DYMクリニック・ことびあクリニック・サクラクロスクリニック
日本語通訳常駐。オンライン診療も可能なので安心です。
医療費と保険
タイの私立病院の医療費は、公的医療機関より高額です。
一般的な外来診察:1,000〜3,000バーツ(約4,200〜12,600円)
詳細な検査や手術:数万〜数十万バーツ
タイの公的医療保険は外国人駐在員をカバーしないため、以下の保険加入が一般的です。
・民間の国際医療保険(年間10万〜30万円程度)
・タイ国内の民間医療保険
健康管理のポイント
タイは日本とは異なり1年を通して温暖な気候です。
厳しい暑さや寒い室内との寒暖差や、辛くて油っこいタイ料理、氷や水など・・・体が慣れるまでは体調を崩しやすいので注意が必要です。
タイで健康に過ごすためには・・・
・水道水は飲まず、飲料水又はミネラルウォーターを必ず利用する
・定期的な運動を心がける(車移動が多くなるので運動不足になりやすい)
・生野菜や果物は十分に洗浄または皮をむいて食べる
・デング熱などの蚊媒介感染症に注意(虫除け対策やワクチン接種を)
・大気汚染が深刻な時期(12月〜3月頃)はマスク着用や外出を控える
医療面では、日本と同等以上のサービスを受けられる環境が整っていますが、費用面での準備が重要です。
特に小さなお子さんがいる家族は、事前に小児科のある病院をチェックしておくと安心でしょう。
タイ(バンコク)の教育環境 – 子連れ駐在の選択肢
子供がいる家族の駐在にとって、教育環境は最も重要な検討事項の一つです。タイには様々な選択肢がありますが、それぞれに特徴があります。
インターナショナルスクール
バンコクには100校以上のインターナショナルスクールがあり、カリキュラムや特色も多様です。
英米系インターナショナルスクール: ASB、NIST、ISBなど
その他の国際カリキュラム:シンガポール系、オーストラリア系など
学費の目安は次の通りです。
入学金:5万~35万バーツ(約21万〜150万円)
年間授業料:35~72万バーツ(約150~300万円)
その他諸経費:7.2万~12万バーツ(約30~50万円/年)
バンコク日本人学校
バンコク日本人学校は、世界で最も歴史が古い、世界最大規模の日本人学校です。
※2025年度の生徒数は約2,038名
タイの私立学校法に基づく私立学校ですが、日本の文部科学省認可の在外教育施設でもあります。
・小学部と中学部の小中一貫校(高等部はない)
・日本の学習指導要領に準拠したカリキュラム
・小学校1年生から英語とタイ語の授業がある
学費の目安は次の通りです。
入学金:16万バーツ(約67.2万円)
年間授業料:14.6万バーツ(約62万円/年)
バス代:2024年度 7.2万バーツ(約30.2万円/年)
詳細情報:バンコク日本人学校公式サイト http://www.tjas.ac.th/
ナーサリー・幼稚園
就学前の子どもについては、以下のような選択肢があります。
ナーサリー:0-3歳頃の子供が対象。保育園のようなイメージ
(年間30万〜60万バーツ程度=約126万〜252万円)
日系・インターナショナル幼稚園:1歳半-6歳の子供が対象。
(月額2〜4万バーツ程度=約8.4万〜16.8万円)
現地の保育施設:(言語面での課題あり)
子連れ駐在の場合、教育費は生活費の中で最も大きな割合を占めることになります。
会社からの教育手当がどの程度あるかが、学校選びに大きく影響します。
また、人気校は待機リストが長いため、赴任が決まったら早めに情報収集と申し込みを行うことをお勧めします。
幼稚園に入る前のお子様はナーサリーの一時利用などを活用されているご家庭も多いです。
駐在の日常生活 – 交通・買い物・レジャー
タイでの日常生活は、日本とは異なる魅力と課題があります。駐在生活をより快適に過ごすためのポイントをご紹介します。
タイ(バンコク)の交通事情と移動手段

筆者にて撮影
バンコクでは徒歩10分の距離に車で1時間かかる時があるなど、交通渋滞が深刻な社会問題となっています。
下記のような様々な移動手段があります。
BTSスカイトレイン/MRT地下鉄:最も効率的な移動手段(1回15〜60バーツ程度=約63〜252円)
タクシー:メーター制で比較的安価(初乗り35バーツ=約147円)
配車アプリ:Grab(東南アジア版Uber)・Bolt・muvmi(トゥクトゥク)が便利!
バイクタクシー:渋滞時に重宝するが安全面に懸念あり。ノーヘルメットで車と車の間をすり抜けます。
トゥクトゥク:料金は交渉制。バンコクでは日常使いするほど安くないので、観光のアトラクションとして楽しむことをおススメします。
運転手付き車:多くの駐在員家族が利用(月契約:1.5万〜3.5万バーツ程度=約6.3万〜14.7万円
※運転手付き車は会社で通勤用に会社が支給してくれる場合が多く、個人で契約している人は少ないかもしれません。
・タクシーの運転手は英語が通じない場合も多く、日本の運転手さんとは異なり道を知らない人も多いので(道案内する必要がある)簡単なタイ語が話せると安心です。メーターを使ってくれない場合や乗車拒否されることも多いので注意。
・配車アプリは流しのタクシーよりは割高ですが、先に行先と料金を確定できるので、タイ語・英語に不安がある方でも安心。
タイ・バンコクはショッピングパラダイス

筆者にて撮影
バンコクはショッピングパラダイスと言われるほど、買い物環境が充実しています。
大型ショッピングモール:セントラルワールド、サイアムパラゴン、エムクオーティエなど
ローカル市場:チャトゥチャック・ウィークエンドマーケット、タラート・ロットファイ、プラトゥーナム市場など
コンビニエンスストア:セブンイレブンが至る所にある
オンラインショッピング:Shopee、Lazadaなどのアプリが便利
レジャーとエンターテイメント

筆者にて撮影
タイでの休日や余暇時間を充実させる選択肢は豊富です。
国内旅行:プーケット、チェンマイ、クラビ、パタヤなどのリゾート地へ行ける(週末旅行も可能)
スポーツ活: ゴルフ、テニス、バドミントン、水泳などのスポーツ施設が充実
日本人コミュニティ:日本人会、趣味のサークル、ボランティア団体など
スパ・マッサージ:リーズナブルな価格で高品質なサービスが受けられる(1時間300〜800バーツ程度=約1,260〜3,360円)
映画:260バーツ(約1100円)~※席によって料金が異なります。
生活コストのイメージ
タイでの生活コストは、ライフスタイルによって大きく異なります。
家族帯同の場合:月額20万〜40万バーツ(約84万〜168万円)
子供の教育費込み:月額30万〜60万バーツ(約126万〜252万円)参考:タイ政府観光庁の生活コスト情報:Tourism Authority of Thailand
まとめ
タイ駐在生活は、日本では体験できない多様な文化や食事、旅行の機会などの魅力がある一方、言語の壁や暑さ、渋滞などの課題もあります。
バンコクでは英語が通じるところが多いので、正直なところタイ語が話せなくても英語が堪能でなくても生活はできます。
ですが、現地の人とのコミュニケーションや情報収集が タイ語でできると、バンコク生活がより便利で充実したものになるでしょう。
また、日本食が手に入りやすいことや、日本と同等の生活・教育機会を得られるという理由から多くの駐在経験者が「タイでの生活は総じて満足度が高い」と評価している点は、これから赴任される方にとって心強いポイントかと思います。
タイ(バンコク)駐在は、東南アジアの中心地で国際的なビジネス経験を積める貴重な機会です。
事前の情報収集と準備をしっかり行い、現地の文化や習慣を尊重する姿勢があれば、充実したタイ生活を送ることができるでしょう。
「マイペンライ(大丈夫、気にしないで)」という言葉に象徴されるタイ人の寛容で陽気な国民性も、外国人が暮らしやすい環境を作り出しています。
この記事が、これからタイ(バンコク)駐在を控えている方々の参考になれば幸いです。
チョークディーナ!(幸運を祈ります!)
・単身駐在員の多くは、平日の昼食は会社近くのレストランやフードコート、夕食は自宅近くの飲食店かデリバリーを利用するパターンが一般的です。
・日本人向けの物件ではキッチンが広いところもあるので、ご家族で生活される方は日本と同様に自炊生活ができます。