タイ人と働くコツ5選|信頼関係を築くためのコミュニケーション術とは?

「できる」と言ったのに終わってない!? なぜ誰も会議で発言しないの…?

タイで働いていると、こうした“戸惑い”にぶつかることは少なくありません。でもそれは、やる気がないわけでもサボっているわけでもなく、文化的な背景や価値観の違いによるものもあります。

タイは親日国で温和な人が多いと言われますが、実は気遣い・面子・空気を読むといった、日本とは似て非なる“職場の流儀”が存在します。

この記事では、そんなタイ人スタッフや同僚と気持ちよく働くために、在住者の視点から厳選した5つのコミュニケーション術をご紹介します。

タイで働くということー日本との違いへの戸惑い

タイで働く中で、言葉の壁よりも戸惑ったのは“価値観”や“職場の空気感”でした。たとえば、納期直前なのに全く焦っている様子がない、重要な資料をお願いしたのに「はい」と言われて終わったまま進まない、会議で発言を促しても沈黙が続く……そんな場面に何度も出くわしました。

最初の頃は「やる気がないのでは?」「真剣に取り組んでいない?」と感じてしまい、ストレスが溜まることもありました。でも後にわかったのは、それがタイの普通であり、相手なりの気遣いや文化的背景があったということ。

10年以上タイ人スタッフと仕事をしてきて実感するのは、「正しさ」や「効率」よりも「関係性」や「空気の和」を大切にする文化の中で、日本人としてどう動くかを理解することが、仕事を円滑に進める第一歩だということです。

それでは具体的にタイ人と働く際に気をつけたいポイントをご紹介します!

1.人前で恥をかかせない

タイでは「面子(メンツ)を非常に大切にします。どんな立場の人であれ、人前で強く叱責したり失敗をあからさまに指摘したりすると、たとえ内容が正しくても信頼関係が一気に崩れることがあります。

特に注意したいのが、「その場の正しさ」よりも「相手の立場への配慮」が重視される点。これは職位の上下を問いません。たとえば、長年一緒に働いてきた部下や、毎日顔を合わせる掃除スタッフの方であっても、大声で怒鳴ったり感情的に叱ったりすると、一度で関係が壊れてしまうこともあります。

そして一度損なった信頼を取り戻すには、時間も労力もかかります。

実際に「怒られた翌日から来なくなった」「突然辞めてしまった」という話も珍しくなく、日本で話題になる若い世代の傾向と重なる部分もあります。

指導や指摘をするコツ

とはいえ改善点を伝えたり、指導や注意をしなければいけない時はもちろんあります。そんなときは、まずは冷静にできれば人目のない場所で相手の面子を守るかたちで行うことが重要です。

そのようなストレスがかかるような話し合いの際に過度に緊張を煽らないように、普段からコミュニケーションをとっておく事も大切です。

2.会議で挙手・質問は期待しない

会議を開いたのに誰も発言せず、こちらばかり話して終わってしまう。 終盤で、「質問はありますか?」と聞いたのに、誰の手も上がらない。でも会議が終わり、数人が部屋の外を出てから個人的に質問をされ、ぜ会議中に聞かなかったの?と思ってしまう、そんな経験はありませんか?

タイでは、会議中に自分の意見を表に出すこと=出しゃばっていると捉えられるリスクがあるため、多くの人が「静かに聞く」姿勢をとります。

日本や欧米諸国では、会議中にどれだけアイディアを出せるか、発言できるかが重要視されることもありますので、真逆の文化に戸惑う外国人も少なくありません。

タイでは学校でも協調性が重視されているようで、発言は積極的には求められないそうです。

とはいえ、せっかく皆で時間をとって集まっているのだから、意見交換を活発に行いたい!と思った場合の対処法は下記です。

具体的な質問を名指しで行う

タイ人にとって、「他に何か意見はありますか?」「質問ありますか?」といった漠然とした問いかけは、非常に答えづらいそうです。全体の前で発言すること自体に心理的ハードルがあり、何をどう話せばいいか分からない」「恥をかきたくないと感じてしまうことが多いのです。

発言を促したいときは、「◯◯さん、セールスマネージャーとしてこの売上の変化をどう見ていますか?」「◯◯さん、生成AIの導入でご自身の仕事にはどんな影響がありそうですか?」のように、各人の業務に沿った具体的なテーマを、名指し+やさしい口調で投げかけるのが効果的です。

また、会議中には発言がなかったものの、終了後に「実はあの件、こう思ってました」と本音を打ち明けてくれることもよくあります。その場合も、「なぜ会議中に言わなかったの?」と責めず、今話してくれてありがとうという姿勢で受け止めることが、長期的な信頼関係につながります。

3.ワイを身につけてハートを掴む

タイの挨拶といえば、両手を胸元で合わせる「ワイ」ニュース番組のアナウンサー、政治家や歌手なども必ずワイで登場。 これを自然にできるだけで、「この人はタイ文化を尊重してくれている」と好印象を持たれやすくなります。

これは「拝む」とは別もので、敬意を表す仕草です。

目下(年下)が目上(年上)の人に対して先にワイを行い、された方がワイで返します。
レストランに入る際などの「いらっしゃいませ」のワイは返す人は少ないですが、職場ではワイを心得ていると、タイ人スタッフのハート鷲掴みです。

「サワッディーカップ(カー)」+軽くワイ

仕事で出会うタイ人スタッフの多くは、笑顔+ワイで挨拶してくれます。 こちらも同じように返すことで、信頼関係の第一歩がスムーズに踏み出せます。

日本人でワイができている人はごく少数

「私は外国人だから」「なんか宗教っぽい」となかなか踏み切れない方が多いように見受けられますが、15年以上タイに住んでみて思うのは、ワイを習得することで、初対面のタイの方と距離が縮まる時間が早まります

日本のお辞儀に色々種類があるように、ワイにも手の位置や目線、相手が誰なのかで少しずつ違いが。

始めは出会った一瞬で「この人は年上・・・下?」「役職は私が上だけど年齢が下だから先出し!」と読む情報が多く戸惑いますが(特に中間管理職や30代前後の時代は難しい)、すぐに慣れますので、周りのタイ人スタッフにもやり方をぜひ聞いてみてください。

4.指示は的確に&確認はこまめに

「はい、わかりました」と返事をしたのに、まったく違うことをしていた…。これもタイの職場あるあるです。

これはタイ人が意図的に無視しているわけではありません。 ポイント2で取り上げたように、「質問すること」は文化的に躊躇するため多くの場合、「とりあえずYESと言う」のが礼儀という文化的背景があります。これを踏まえて求めている結果を出してもらうには、

曖昧な言い回しではなく、的確に指示を出し、確認を怠らない

こちらの姿勢が重要です。

「わかりました」と言われたあとに軽く再確認する習慣をつけると、誤解や行き違いをぐっと減らすことができます。

5.叱るより“ほめて伸ばす”文化

タイの職場では、怒鳴る・強く叱る威圧的な人・怖い人という印象を持たれることが多く、萎縮や離職につながる場合もあります。外国人として働くにあたり、同僚からそう思われてしまうと、仕事にも支障が出るかもしれません。

特に若い世代は、「怒られて伸びる」よりも「認められて育つ」傾向が強く、モチベーション管理が非常に重要です。

「ありがとう」「助かったよ」「この部分すごくよかったね」

小さなことでも、具体的に褒める・感謝を伝えることで、責任感ややる気を自然に引き出すことができます。

筆者が実感 “職場で人気な日本人”のリアルなふるまい

日系・外資系企業で15年以上勤務してきた筆者の経験から、タイ人スタッフとのコミュニケーションがうまく取れていた日本人スタッフには、ある共通点がありました。

ここで言う「人気がある」とは、仕事のスキルや役職に関係なく、「タイ人スタッフとコミュニケーションが取れており、良い関係が築けていたか」という意味です。

以下は、職場で親しまれていた日本人スタッフの特徴です。

・いつも楽しそうにしている(イライラや不機嫌を見せない)
・コーヒーブレイクやおやつタイムに積極的に参加する(雑談も大切)
・ランチ・夕食会に顔を出す(年度末・祝日前・退職日など)
・廊下やエレベーターなど、どこで会っても笑顔で挨拶する(職場外で会っても)
・結婚式・お葬式など、スタッフの人生イベントにも参加する(家族で参加)
・社内イベントでは思い切り楽しむ(恥ずかしがらず“ノリよく”)

反対に、「ちょっと距離を置かれていた」日本人には、こんな傾向が見られました。

・常に不機嫌・不機嫌な顔に見える
・いつも一人で行動している
・タイ人スタッフと同じテーブルにつかない
・廊下ですれ違っても挨拶をしない
・結婚式やお葬式など、プライベートなイベントには参加しない
・社内イベントは避けがち

タイでは、職場でも「人間関係」が非常に重視される文化があります。

普段から接しやすい」「一緒にいて楽しい」と思われるかどうかが、業務のスムーズさや協力体制に大きく影響してきます。

まとめ:文化を知れば、仕事がもっとやりやすくなる

タイ人と働くうえで大切なのは、“日本式の常識”がそのまま通用しないことを理解する姿勢です。

・面子を守る
・的確な質問をする
・挨拶を大切にする
・YESの意味を見極める
・褒めて育てる

これらを意識するだけで、チーム全体の雰囲気が柔らかくなり、仕事も円滑に進みやすくなります。

何より、「違いを受け入れること」自体が信頼構築につながりますので、文化の違いを楽しむつもりで、ぜひ今日から実践してみてくださいね!

現地在住ライター紹介
この記事を書いた人
カイシー

海外在20年以上、現在はバンコク拠点に生活。
幼少期より多国籍な環境で育ち、バンコクの日系・外資系の企業で勤務、国際結婚を経て海外での暮らしとキャリアを深めています。海外での就職や働き方、ローカルスタッフとの接し方など自身の経験をもとに発信中。

趣味はカフェホッピング、海外ドラマ鑑賞、気になることはすぐ飛びつくけど継続が苦手なINFJ。

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