筆者は、自動車の運転免許をタイで(ゼロから)取得しました。
「タイで自動車の運転免許を日本人が取得するのって大変なの?」
「ゼロからタイで車の運転免許を取得する方法を知りたい」
という疑問に応えるべく、バンコク在住14年、実際に運転免許を2025年3月31日に取得した筆者が分かりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてもらえたら幸いです。
①取得までの時間が短い
拘束期間はたった3日間、計15時間程で取得可能。日本の1~3か月間、約60時間と比べると大幅な時短効果があります。
②料金が安い
取得費用は合計6,895バーツ(約29,300円)。内訳は教習所6,000バーツ、健康診断書200バーツ、在留届出済証明書490バーツ、免許証発行205バーツです。日本の約30万円と比べ、10分の1の費用で取得できます。
③ASEAN協定加盟10カ国内で、国際運転免許証として有効
ラオス、ミャンマー、カンボジア、インドネシア、シンガポール、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシアで書き換え不要で運転可能です。特にベトナムとインドネシアは日本の国際免許証では運転できないため大きなメリットです。
④タイ国内線ではパスポート代わりの身分証として有効
タイ国内を飛行機で移動する際、運転免許証の提示で搭乗することができます。
⑤免許証の提示でタイ人料金になる場合がある
タイでは、寺院や国立公園を含む多くの場所で、タイ人と外国人に対して異なる料金体系が適用されており、外国人はより高い入場料を支払うことが一般的な慣行となっています。
しかしタイの免許証の提示で、タイ人と同じ料金で入場することができる場合があります。
⑥タイで取得した運転免許を日本帰国後に切り替えることが可能
ただし居住地を管轄する運転免許センターでの手続きが必要です。
また、書類審査後に適性検査(視力検査等)と技能確認(簡易的な運転試験)が必須となります。自治体によって対応や追加書類が異なる場合があります。
タイで免許を取得する方法は2つあります。
- ①陸運局でビデオ講習・試験、後日免許証発行
- ②教習所で講習・試験、後日陸運局で免許証発行
筆者は全く運転経験がありませんでしたので、講習はビデオではなく、先生が対面で教えてくれるという教習所を選びました。というわけで、今回は②の方法について解説いたします。
※ちなみに日本語のみで運転免許をゼロから取得することは難しく、英語またはタイ語でのコミュニケーションが必須となります。
今回筆者がお世話になったのは、ボス・パタヤ・ドライバースクールです。
Boss Pattaya Driver School โรงเรียนสอนขับรถ บอส์สพัทยาไดร์ฟเวอร์

この教習所は、バンコクから車で約2時間の距離に位置する、パタヤというビーチリゾート都市にあります。場所は遠いですが「先生が親切」という口コミを読んでここに決めました。
受付の人はもちろん、先生も英語でのコミュニケーションが可能です。筆者の他に、西洋人、中国人の生徒がおり、外国人対応にも慣れているようでした。
ウェブサイトはタイ語のみですが、Lineだと英語で問い合わせ・申し込みが可能です。(Line IDは@boss64です)
■料金
6,000バーツ/1人(外国人料金)
■スケジュール
全3日間のコースです。実技講習(10時間)、学科講習(5時間)、学科試験(最大2時間)という構成です。
1日目と2日目は実技講習(1日5時間、計10時間)
- ・午前の部: 7:00am~12:00pm(6:45am集合)
- ・午後の部: 12:00pm~17:00pm(11:45am集合)
上記2部体制で、どちらか好きな時間帯を選ぶことができます。
3日目最終日は学科講習と試験 6:40am~16:00pm(6:30am集合)
教室で先生による学科講習が5時間あり、その後選択式の試験を受けます。試験を受けられるのは水曜日か日曜日のみです。
バンコクに住んでいる筆者は、金曜日(実技講習)、土曜日(実技講習・実技試験)、日曜日(学科講習・学科試験)というスケジュールにしました。
■予約方法と事前準備
まずはLineで下記を伝えて予約します。
- ・コースを受ける希望日程
- ・パスポートの顔写真のページ
- ・最新のビザスタンプのページ
- ・タイの携帯番号
次にデポジットとしてコース料金の一部2,000バーツを、銀行アプリのQRコード決済で支払います。(残り4,000バーツは現地で支払い)1時間程度で領収書の写真が送られてきます。
■必要書類
- ①パスポート
運転免許証取得日から数えて、ビザの有効期限まで30日以上あることが必須です。 - ②健康診断書
教習所に着いて、その場で発行してもらえたので事前準備は不要でした(発行手数料200バーツ)。もちろん事前に病院かクリニックで、運転免許取得用の健康診断書を発行してもらうことも可能です(50~200バーツ程度)。ただし有効期限は発行日から1か月です。 - ③タイでの居住証明書(事前準備必須)
この項目については、各自治体によって必要資料が異なります。
在留届出済証明発行の流れ
①在留届出済証明の申請書をダウンロード・記入
②大使館の領事部へ申請(平日 08:30~12:00, 13:30~16:00)
必要書類:申請書、パスポート原本とコピー、現住所証明書類
③申請受理票を受け取り(筆者は3営業日で交付されました)
④再び大使館へ行き、手数料490バーツを支払って証明書を受領
■Day 1
8:45amにGrabタクシーでバンコクの家を出発し、11:00amにパタヤの教習所に到着しました。タクシー料金は1,458バーツ(約6,200円)でした。140kmもの距離だと日本では2~3万円ほど掛かりますので、タイのタクシーはとても安いです。
その他バンコク⇔パタヤは定期的にバスやミニバンも出ており、片道300バーツ程度で行くこともできます。
到着後、まず受付で下記3点を提出します。
- ①パスポート
- ②(事前に取った方は) 健康診断書
- ③在留届出済証明書※
※受付の人がコピーを取った後、原本は返却してもらって大切に保管してください。後日バンコクの陸運局で免許証を発行してもらう際に必要になります。
最後に残りの料金を支払って受付終了です。(現金または銀行アプリ内のQRコード決済が可能です。)
その後、先生からブレーキとアクセルの踏み方を教わり、身体適正検査(ブレーキ反応速度、遠近感、色覚、視界テスト)を行います。

ブレーキ反応速度を判定中
合格したら教習場に移動し、先生の運転で教習場のコースを周回します。その間、基本操作を教えてもらいます。

教習場のコース
周回が終わると、先生が助手席に移動し、生徒は運転席に座らされます。まさかの即運転です。
①路肩25cm以内の距離に寄せて停車 ②縦列駐車 ③ポール間の前進と後進
この3点を重点的に練習し、その後カーブ、右折、左折を練習し、なんと、もう公道にも出ます。不安ではありましたが、個人的には「とにかくやってみよう」という校風が好きでした。
住宅街、大通り、商店街を運転する中で、標識の意味、適切な速度、車体の距離感等を教えてもらいます。30分程運転して教習場に戻る頃には少し自信がついていました。
ここまで読んで「おや?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。日本の教習所とは順序が逆で、タイでは実技から始まり学科は最終日という驚きの流れ。さすがアメージング・タイランドですね(笑)

「とにかくやってみよう」
■Day 2
2日目は前日の復習をした後、実技試験に移ります。試験内容は前日に練習した3つ(路肩停車、縦列駐車、ポール間の前進後進)です。各所に試験官が立っていて、合格したら試験官と一緒に写真を撮ります。

試験中に写真撮影があるなんて、タイらしいですね。
実技試験終了後、実技講習に戻ります。2日目は教習所から約30キロ離れた観光名所・チーチャン山へ行って帰ってくるという無茶とも思えるコース。
先生によるとこれは通常のコースとは異なる、特別コースとのこと。せっかく遠いところから来たのだから、パタヤを楽しんでもらいたいという学長の粋な?計らいによって実現したのだそうです。「ちょっと遠すぎる」という言葉を飲み込み、いざ出陣。

チーチャン山
運転してみると、道中には美しいお寺や有名ゴルフコース、印象的な並木トンネルなどが点在し、景色の素晴らしさに感動しました。(運転していたので残念ながら写真は撮れませんでした。)
目的地のチーチャン山の壮大な眺めは圧巻。非常に贅沢な教習コースでした。
Day 3
最終日は学科講習と学科試験です。6:30amに集合し、先生による5時間ぶっ通しの講習を受けます(途中トイレ休憩あり)。昼食の時間はないので、必要な方は近くのコンビニで事前に軽食を購入しておくことをおすすめします。
講習後、PCで学科試験を受けます。4つの選択肢から正解を選ぶ方式で、全50問中45問正解で合格です。制限時間は1時間、2回まで再試験が可能です。
試験室には監視カメラがあり、不正行為は厳しく取り締まられます。筆者は2度目で合格できました。もし不合格だったら再びパタヤまで足を運ぶ必要があったので、何とか合格できて本当に安心しました。
最後に合格証明書を受け取り、16:00頃にパタヤを後にしてバンコクへ帰りました。
翌日、チャトチャック陸運局4番ビルで免許証発行手続きを行いました。陸運局内も教習所同様に「サンダル・半ズボン・タンクトップ」禁止です。

陸運局4番ビルの入り口

入口から向かって右側の「Personal Driving License」と書かれた部屋に入ります。
ウォークインで受付番号をもらいます。

(A)をタッチすると受付番号が発券されます。
外国人の受付は8:30am開始ですが、筆者は8:00am前に受付番号を取ったので、ほぼ待ち時間なくカウンターに呼ばれました。

カウンター
書類チェック後、発行手続き用の整理券をもらいます。筆者は同日の午後13時の枠を取ることができました。

黄色の紙が整理券です。
提出書類一覧
- ①教習所でもらった合格証明書の原本
- ②パスポート原本と各種コピー(顔写真ページ、ビザスタンプ、入国スタンプ)
- ③日本大使館領事部発行の在留届出済証明 原本
- ④健康診断書 原本(発行日から1か月以内)
13時に陸運局4番ビルに戻り、2階の1番カウンターで整理券を渡して受付番号をもらいます。

入口から一番左奥にある階段を登ります。

2階の入り口です。

①番カウンターで、整理券を渡し、受付番号を受け取ります。
そのまま右奥に進むと待合場所があります。

待合場所です。とても広いです。
モニターで受付番号が表示されるのを待ちます。 筆者は30分程で呼ばれました。

モニター画面の左側が受付番号で、右側がサービスカウンターの番号です。
呼ばれたら申請資料を提出し、写真撮影、手数料205バーツを支払います。その場で初回のテンポラリー運転免許証(2年間有効)が発行されます。

サービスカウンター

免許証用写真を撮影するカメラ
- ✓ 日本の10分の1の費用(約3万円)で取得可能
- ✓ わずか3日間という短期間で完了
- ✓ ASEAN10カ国で国際免許なしで運転可能
- ✓ タイ国内線搭乗時の身分証明として使用可能
- ✓ 観光施設等でタイ人料金が適用される可能性あり
- ✓ タイでの就職活動で有利(特に営業職など)
「初日から実技訓練」という日本では考えられない実践的な教習スタイルを体験できるのも魅力です。この記事が、タイ旅行や駐在を検討している方、アジア各国での運転を計画している方、さらには新たな挑戦を求める方の参考になれば幸いです。タイでの免許取得は、単なる運転資格以上の価値と可能性を秘めています。